「利用者さんのことが大好き。だから、だから余計につらい」
介護の仕事をしているHSPの方から、よくこういう言葉を聞きます。
冷たい人なら割り切れるのに。感じすぎるから、もう限界なんだと。
私はかつて介護施設でボランティアをしていました。認知症の利用者さんが苦しそうにしているのを見て、なぜかその苦しさがそのまま自分に移ってきて、ボランティア後の3日間、ベッドから起き上がれなかった経験があります。
あれは「共感疲労」というものだと、後になって知りました。
この記事では、HSPの介護士が辞めたいと感じる理由と、次のステップを考えるためのヒントをお伝えします。
HSP介護士が辞めたいと感じる5つの理由
介護の仕事が好きなのに、毎日がつらい。自分が弱いだけなのかな…。
弱いんじゃなくて、感じすぎているんです。それはHSPの特性で、あなたのせいじゃない。
①共感疲労:利用者の苦しさをもらいすぎる
HSPには「ミラーニューロン」と呼ばれる神経が活発に働きやすいと言われています。
目の前の人の感情を、まるで自分のことのように受け取ってしまうんです。
介護現場では、苦しんでいる利用者さんと毎日向き合います。非HSPなら仕事として一定の距離を保てるところが、HSPには難しい。
私がボランティアで体験したこともまさにこれでした。認知症の利用者さんが「助けて、苦しい」と繰り返すのを見て、帰宅後も耳から離れなくて。3日間、ごはんも食べられませんでした。
SNSでも「利用者さんが亡くなった日は、何日も眠れない」「苦しそうな顔が頭から消えない」という声が後を絶ちません。
②夜勤後の感覚過敏がひどい
介護施設では夜勤が必須のことが多いですね。
睡眠が乱れると、HSPの感覚過敏は一気に悪化します。音・光・においへの反応が強くなって、普段なら耐えられることが耐えられなくなる。
夜勤明けにコンビニへ寄っただけで、蛍光灯の明るさと雑音で頭が割れそうになった、という話を知り合いのHSP介護士から聞いたことがあります。
夜勤のたびに「また数日間調子が悪くなる」とわかっていると、仕事を続けることへの不安が積み重なっていきます。
③チームの人間関係のギスギスに消耗する
介護現場は慢性的な人手不足。余裕がないから、スタッフ同士の関係もギスギスしやすいです。
HSPは場の空気を敏感に察知するので、誰かが不機嫌なだけで「自分が何かしたのかな」と気になってしまう。
実際、介護労働安定センターの「介護労働実態調査(2023年)」によると、介護職員の離職理由の第1位は「職場の人間関係の問題」で、全体の約20%を占めています。人間関係に消耗するのはHSPに限った話ではないけれど、HSPにとってその消耗度は段違いです。
同調査では、ストレスの要因として「利用者・家族からのハラスメント」を挙げた人も多く、HSPには特に重くのしかかる環境と言えます。
④身体的な消耗が感覚過敏を悪化させる
介護の仕事は体を使います。移乗介助・入浴介助・夜勤の繰り返し。
HSPは身体的な疲れが刺激への過敏さを増幅させます。疲れているときほど、音がうるさく聞こえたり、においがきつく感じたりする。
正直に言うと、これは介護の仕事がHSPに特に厳しい理由のひとつだと思っています。体の消耗と感覚過敏が悪循環になるんです。
⑤自分の感情をOFFにできない
「仕事だから感情を切り離して」と言われても、HSPにはそれができません。
接客業をしていた頃も同じでした。お客さんに怒鳴られた日は、家に帰ってからも何時間もその場面が頭でリプレイされて。HSPは感情を引きずりやすい特性があるので、仕事の出来事を家でも持ち帰ってしまうんです。
介護現場でのつらい場面、利用者さんとの別れ、チームのトラブル。そういったことが全部、休みの日にも頭を占領し続けます。
辞めていいサイン3つ|限界を超えているかチェック
「つらいから辞める」だけでは、次の職場でも同じことが起きるかもしれない。でも、体や心が限界を超えているサインがあるなら、今すぐ動いていいと思っています。
①体調変化:眠れない・食べられない・頭痛や胃痛が続いている
②感情の麻痺:泣けなくなった・何も感じなくなってきた
③休みの日も仕事のことを考えて休めない
このうち2つ以上当てはまるなら、今の環境があなたの神経系を傷つけています。
「もう少し頑張れば慣れるかも」と思いやすいのもHSPの特徴ですが、感情の麻痺は危険信号です。感じなくなることで自分を守っているだけで、回復には時間がかかります。
とはいえ、辞めることが唯一の正解とは限りません。環境を変えるだけで劇的に楽になるケースもあるので、次のセクションを読んでから判断してほしいです。
転職先2ルート|介護士からの選択肢を整理します
ルートA:介護の中で環境を変える
「介護の仕事は好き。でも今の環境がつらい」という方に向いているルートです。
デイサービスは、夜勤がありません。日中だけの勤務になるので、睡眠リズムが整いやすく、感覚過敏の悪化を抑えられます。利用者さんが元気な時間帯に関わることが多いので、共感疲労も比較的少ない傾向にあります。
居宅介護(訪問介護)は、一対一の関わりになります。大勢の人と同時に関わるストレスが減る分、HSPには合う場合があります。ただし、移動が多く孤独になりやすい面もあるので向き不向きがあります。
ケアマネジャーは、現場の介護業務から離れて相談・計画業務が中心になります。受験資格(実務経験5年)が必要ですが、身体的な消耗は大幅に減ります。
ルートB:介護の外へ転職する
「介護そのものが限界」という方は、職種を変えることも選択肢です。
医療事務・一般事務は、人の痛みや苦しみと直接向き合う機会が減ります。HSPが消耗しやすい「共感疲労」が起きにくい環境です。未経験でも転職しやすく、リモートワーク化も進んでいます。
ITサポート・事務系IT職は、人との関わりを選べる仕事が増えています。チャット対応が中心のサポート職なら、電話や対面のプレッシャーが軽減されます。
動物看護・トリマーは、介護スキルと親和性があります。人間への共感疲労が強いHSPの中には、動物との関わりならリセットできるという方も少なくありません。ただし、給与水準が低めな点は覚悟が必要です。
介護の資格があるから、介護以外に転職できるか不安です…。
介護で身についた「観察力」「傾聴力」「細かいケアへの気づき」は、他の職種でも高く評価されます。介護専門の転職エージェントに相談すると、自分が思っていなかった選択肢が見えてくることが多いですよ。
医療・福祉系の職場で働くHSPの悩みについては、医療・福祉で働くHSPはこちらもを読んでみてください。
福祉系から転職を考えている方はこちらも参考になります。
介護士の転職を成功させるエージェントの選び方
転職活動で失敗しやすいのが、エージェント選びです。
介護職の転職には大きく「介護専門型」と「総合型」の2種類があります。
①介護専門型エージェント(レバケアやカイゴジョブなど)
介護業界の求人数が多く、施設の内情に詳しいです。
「夜勤なし」「人間関係が穏やかな職場」など、HSP向けの条件で絞り込みやすい。現場の実態を知っているアドバイザーが多いので、「この施設はギスギスしていないか」を教えてもらいやすいです。
介護内で環境を変えたい方には、まず介護専門型を選ぶのが近道です。
②総合型エージェント(リクルートエージェントやdodaなど)
介護以外の職種へ転職する場合は総合型が強いです。
事務職・ITサポート・医療事務など、異職種の求人も一括で見られます。ただし、介護業界の内情には詳しくないことが多いので、「介護からどう転職するか」の相談には介護専門型より不向きな場合があります。
HSP向けのエージェント選びについてはこちらの記事でまとめています。介護からの転職、まずはエージェントに相談を
まとめ:無理をやめて、次の一手を考えましょう
HSPの介護士が辞めたいと感じる理由は、あなたが弱いからではありません。
共感疲労・夜勤の感覚過敏・職場の人間関係・身体的消耗・感情のOFFができないこと。これだけの重荷を毎日背負っているんです。
辞めていいサイン(体調変化・感情麻痺・休日も仕事が頭から離れない)が2つ以上ある方は、今すぐ環境を変える準備を始めてほしいです。
まず休む:心と体を回復させることが最優先。有給消化や休職も立派な選択肢です。
→ まず休んで考えたい方はこちら
それから転職を考える:回復しながら、エージェントに相談してみてください。
→ 介護からの転職、まずはエージェントに相談を
「介護の職場はなかなか辞めにくい」という方も多いです。人手不足で引き留められたり、罪悪感で言い出せなかったり。そういう場合は、退職代行という選択肢もあります。
あなたの感じすぎる心は、介護の現場でたくさんの人を助けてきた力です。その力を、もっと自分に優しい環境で使ってほしいと思います。

